江戸末期の家
改修 / 鳥取県琴浦町
2020年
施工業者:鶴澤建築
ご依頼内容・施工前の様子
- 冬の寒さ対策
- 明るくしたい
- 使い勝手の良い収納が欲しい
床下は湿度が高く、土にはカビが生え、木材は腐朽菌の被害が確認できます
提案内容・施工風景
- 床下の防湿対策と腐朽被害部材の取替
- 小屋梁の補強、柱を追加する
- 改修範囲の断熱工事
- トイレのバリアフリー化
- 使い勝手の良い収納を確保
- 内側の部屋と縁側をひとつの空間につなげ、そのうえで天窓(断熱ブラインド付)を採用して、明るさを確保
この家は、1800年頃に茅葺き屋根で建てられました。その後、昭和26年に大改造を行っておられます。大改造の内容は、瓦屋根への葺替え、建物拡張と間取りの改変です。
築200年を超え、大改造を経ていることから、調査は入念におこないました。「1800年頃の当初建物」と「昭和26年の大改造部分」とが健全に保たれているか?沈下・傾き、木の癖による歪みなど、現状を把握することに努めました。調査の結果、最大67mmの沈下・最大45mm/Mの傾きと、床下や小屋組みに決定的な不具合を確認しました。
同時にお施主さんの要望をお聞きします。それらを可能な限り叶えながら、調査で確認した不具合を解決していきます。
床・壁・天井を全て剥がし、床下・柱・梁などを現します。床下には湿気対策の防湿フィルムを敷き込み、防蟻処理も行います
施工完了・その後
大きな窓と天窓を設け、自然光の明るさを確保しました。
空間の広さを感じられるよう、床・天井の目地方向を揃え、それに合うように障子組子もデザインしました。
当初材(1800年頃)の黒色と、この度の木材の色の対比を使って、明るさの強調を狙いました
設計士より
築年数は200年を経ており、沈下・傾き・木の癖が大きく、「どこを基準に納めていくか?」など、大工さんと密に相談しながら工事しました。
調査にあたっては、「1800年頃の当初建物部分」と「昭和26年の大改造部分との接合箇所」が共に健全であるか、その上で大改造によって建物に無理が生じていないかを特に注意して調査しました。結果、重要な柱が失われており、梁が重みを支えられていないことがわかりました。
お施主さんからの要望に応えることは大前提です。それに加え、この調査を行うことによって、専門家の目でしか気が付くことのできない問題点の改善を提案することができました。
それは当初予定していた改修範囲以外の部分にも及びましたが、お施主さんにご提案の上、工事を行いました。
1800年頃の新築時、昭和26年の大改造時のご当主や職人、そして現在のご当主が建築事業に傾けた気概を感じ、「この度は私達が応えるんだ」と覚悟した現場でした。