大正六年の家
改修 / 鳥取県湯梨浜町
2020年
施工業者:㈲橋谷工務店
ご依頼内容・施工前の様子
- 水廻りを使い易くしたい
- これから先の居住環境の改善
- シンプル・イズ・ベスト
屋根裏には立派な梁が架かっていました。一部特別に大きな梁を架け、広い部屋を確保しようとした先人の苦労を感じ取れます
提案内容・施工風景
- コンクリート基礎と木造軸組み(骨組み)の構造補強
- 気密・断熱改修
- この家の特徴を活かすため、隠れていた梁組みを表す
- 存在感のある丸柱を、意匠も兼ねて新たに建てる
- 御施主さんこだわりの内装材の使用
- 古い電気配線を一新
床・壁・天井を全て剥がし、基礎石・柱・梁などを現します
施工完了・その後
居住空間と裏庭を、ウッドデッキを介して繋ぎます。このデッキでは、四季を感じられ、この度のように時を経た家でしか得られない特別な空間となります。
設計士より
御施主さんとの出会いは、10年程前、私が携わっていた文化財修理の現場でした。休憩時間に、見学へ訪ねてこられた方が、この度の御施主さんでした。「古い家に住んでいて」「土間は吹き抜けで、大黒柱があって」と話して下さいました。丁度その頃、私には調査へ伺いたいと気になっていた1件の家がありました。この方が話される特徴が見事に一致するため、恐る恐る○○さんですか?とお聞きすると、偶然に一致しました。なにか、運命的なものを感じずにはいられませんでした。それからは度々、ご自宅へ伺い、趣味として調査をさせていただいていました。
そのご縁もあって、この度築102年の伝統的な民家の改修設計に携わらせていただきました。大戸(現在の玄関)を潜った広い土間からは、太い梁と、大正期最先端のキングポストトラス構造が見られます。
この度の改修は、奥さんが作成されていたスケッチを基に、設計を詰めていきました。並行して入念な調査を行い、荷重の伝え方を検討していきます。
建物をジャッキで上げ、コンクリート基礎を新設し、部屋の中央には、特徴的な古材の丸柱を建て補強しました。この丸柱は設計期間中に、御縁をいただいた古材です。
御施主さん厳選の住宅設備器具と、こだわりの建材に、大因州製紙和紙・杉板・漆喰・木製建具をあわせ、シンプルに仕上げるよう努めました。御施主さんの見識の広さに、学ばせていただくことも多くありました。
「幅広い世代に魅力的に見えること」これが自身のテーマでもあり、願いでもありました。